生物情報学
概要
2つの論文で,ベイジアンネットワークにおける因果関係(原因と結果の関係)強度の時間遷移を推測する手法を提案しました.
ベイジアンネットワークは,確率変数として表現されるイベント間の因果関係を確率により記述するグラフィカルモデルです.イベントを頂点,因果関係の有無を有向辺,因果関係を条件付き確率とする非循環有向グラフで表現されます.
従来ベイジアンネットワークでは,観測データの全観察点において因果関係が存在する前提での解析がなされてきました.この前提では,観測途中で因果関係が発生したり,消滅したりするような状況に対応する事ができませんでした.より細かく言えば,時間の移り変わりに伴い因果関係の強弱が変化するような事態を想定していません.
そこで,因果関係の変遷を前提とし,その強弱の変遷を提示するアルゴリズムを提案しました.提案手法では統計学における交差検証の仕組みを活用し,ある一時点での因果関係強度を測定します.提案手法の応用事例として,大腸菌が栄養源を切り替える様を観測した時系列データを解析しました.
その結果,大腸菌内部の化学反応に関する因果関係の切り替えを検出することに成功しました.
また,マウスの脂肪細胞分化過程を解析したところ,これまでより詳細な遺伝子制御ネットワークの時系列変化を捉える事ができました.
論文紹介
生物の時系列データの解析
Detecting shifts in gene regulatory networks
during time-course experiments at single-time-point temporal resolution
Journal of Bioinformatics and Computational Biology vol.13 issue. 5 (2016)
Automated Transition Analysis of Activated Gene Regulation
during Diauxic Nutrient Shift in Escherichia Coli and Adipocyte Differentiation in Mouse Cells