法情報科学
概要
1つめの論文
文字列を対象としたデータマイング技法を,地方自治体が制定する法である例規へ応用した研究です.本研究は地方自治体の法務作業の軽減を目的としています.
全国の自治体は各議会において独立して条例を制定しています.しかし日本では中央集権的な性質が強いため,類似した条例が全国各地の自治体に多数存在しています.例えば青少年保護育成に関する条例は長野県を除く全46都道府県で制定されています.この46条例の差異の調査を人手で行うのは大変です.また,各都道府県は800件から5000件程度の例規を制定しています.
そこで,条文レベルで条例を比較した結果である条文対応表を計算機で自動生成する手法を提案しました. 提案手法では品詞別の単語頻度に基づくスコアを用いたテキストアライメントを行っています.論文中,全96種類のスコアを比較評価し,最も良いスコアの例示も行っています.
提案手法は都道府県,市町村の全例規に対応可能であり,法学教育や自治体の法務作業,特に市町村合併時の業務量の軽減に有効です.
2つめの論文
前項の論文同様,文字列を対象としたデータマイング技法の,地方自治体が制定する法である例規への応用研究です.これまで知られていなかった地方自治体間の関係を見出す事ができました.
ある地方自治体の全例規を階層的に整理したものを例規集といいます.この例規集を節が例規の階層を葉が例規とする木構造とみなし,その類似性を木構造上の編集距離として定義しました.
そして木構造の距離に基づき47都道府県の例規集を多次元尺度構成法で平面上に描写し,クラスタリングを行いました.
その結果,京都を中心とし,地方へと広がる同心円の波紋状に都道府県が配置されている事を見出しました.言葉遣いなどの文化が京都を中心として地方へと広がっていった事は知られていますが,例規集も同様の状況となっているという面白い結果でした.なお,東京,神奈川,北海道はそれぞれ独立した外れ値となっていました.